www.korg.com
(スクリーンショットは上記KORG公式ページより)
これまで使ってきた課金ガジェットの雑感を書いていきます。
この記事はシンセサイザーミュージックを主に作っている人目線で書いています。そのため同じ楽曲属性を持つ方にとっては有用かなと思います。
一応サンクラのアカウント。最近はかなりジャンルが混沌と化しているけど傾向としてはゲームミュージックでくくりやすいかな?と思ってます。
soundcloud.com
Bilbao
総評: 時代がやや古めのドラム音源、搭載されている音色はほぼ使わず、純粋に外部から持ってきたサンプラーとして利用
KORG Gadgetにはデフォルトで手持ちのサンプル音源を持ち込む方法がZurichしか存在せず、Zurichもどちらかというとボーカルやギター等の長いフレーズ用のガジェットなのでキックスネア等の短い音源を扱うには不適です。そのため、好きなサンプル音源を使うには基本的にコイツを使うしかありません。
ガジェットの説明にも書いてますが、Bilbaoは電子系のジャンルに全然向いてない音なので自分みたいな曲を作る人には無用です。一応パーカッション類やFX(ウィンドベル等)は使う機会がありそうですが、Londonなどの他ドラムマシンと違って音色リストが整理されていないので目当ての音源を探すにも一苦労です。従って、Bilbaoはインポートした音源用サンプラーとして割り切る方が精神衛生的には安全です。電子楽曲でも弱主張寄りの曲ならそこそこ相性がいいと思いますが……。
あとサンプルのリバース再生ができません。ここだけはマジで擁護できない。仕方ないので波形編集アプリでいちいち反転させてから再度サンプラーに突っ込んでます。
ちなみにこれはBilbaoに限らず全ての外部音源を用いることができるガジェットに言えることですが、手持ちの音源を開こうとするとたまにKORG Gadgetがクラッシュします。音源を変更する前にプロジェクトを保存するクセがつきます。全然嬉しくない
Abu Dhabi
総評: ブレイクビーツやボーカルチョップを手軽に作れるドラムマシン。デフォルトの音源も使い勝手がよい
これはワンループの音源を自動で16個にカットして貼り付けるガジェットです。頭から順に並べたら純粋にワンループ音源をそのまま流すことができるので、ループ用サンプラーとしても用いることができます。ビート等の音源の場合はアタックが自動で揃うので多少のBPM変動に耐えることができます。ループ音源用としてのみ使う場合は後述するSydneyの方が便利ですが。
Abu Dhabiのメインはループ音源をバラして並び替えることです。ブレイクビーツもそうですが、ボーカル音源をバラして各サンプルのピッチをいじってEDM定番のボーカルチョップも作れます。
ピッチをいじるときの小技として、ピッチボタンをタップしてピッチエディット状態になった後にさらにピッチボタンをタップするとプラスマイナスの記号が出てきます。これを使えばピッチを10か100単位で動かすことができます。これに気づくまでのピッチ調整が修羅すぎでした。
デフォルトで搭載されているAdd-beat系の音源は裏でうっすらと鳴らすだけでスピード感のあるトラックになります。それから、もちろん手持ちの音源を読み込ませることも可能です。
Kamata
総評: 豊かな表現で8bitをやりたいなら断然オススメ、チップチューンが好きな人なら幅広いジャンルに混ぜることも可能
バンダイナムコの古のピコピコ音源の再現音源。単純な8bitサウンドではなく、若干実機感のあるノイズみたいなのも入っています。KORG Gadgetの8bit音源と言えば対抗馬にKingstonが上がりますが、オシレータの自由度はKamataの方が圧倒的に上です。
第一に波形が一般的なサイン波トライアングル波ソー波……と選ぶのではなく、自分で「描く」ことができます。いわゆるウェーブテーブル音源。また。ADSLに加えてLFOやポルタメント等も備わっています。エフェクトはリバーブとディレイで非常に簡素、というよりは実機で再現可能なものになっていると思われます。対照的にKingstonはよりリアルなエフェクトがメインであるので、あちらはfake 8 bit向けとなってます。
シンプルにチップチューンミュージックを作るならKingstonだけでも事足りそうですが、Kamataの面白さも相当なのでオススメしたいです。一時期はKamataが最も使用率の高いガジェットになってたくらいです。
また、黄色いボタンを長押しするとブロックくずしが始まります。なんで?
最後に触ったパラメータ―で下のバーを動かすことができ、そのパラメータ―にオートメーションを描くことで自動でバーを動かすこともできます。なんで?
ちなみにKamataはSwitch版でも購入して使用できます。
Gladstone
総評: 生楽器・バンド方面をKORG Gadgetでやるなら必須、電子系でもフィルを作るのにたまに使える
一時期バンドサウンド作りたくて買ったけどバンドサウンドのリズムパターンわかんねえな!って言ってぶん投げたガジェット第1号です。たまに使います。
ジャンル的にはロックがメインターゲットだと思いますが、KORG Gadgetが不得意な方面なのでそういう意味でもったいないなと思います。一応バンドサウンド自体は他の追加購入ガジェットを揃えれば作れるみたいですし、ギターアンプも備わってるのでやれないこともないと思います。ギター持ってないので録音したことないけど
それ以外のジャンルでも単体の音が他のドラムガジェットにはない音が多いのでバリエーションを確保するために買うのはアリかなと思います。個人的にはライドシンバルとスネアをGladstoneからもってくることがたまにあります。あとボサノバ作るときに役に立ったなあといった感じです。
それからEDM方面でもあえてアコースティックなサウンドをフィルにぶちかますことで一気に印象を変えることができるので、そういう使い方もできます。なので持っておいて損はないかなと思います。
Madrid
総評: バンド系やるならGladstoneとセットでほしいガジェット、電子系には使う機会ないと思われ
バンドサウンド第2号であり、一時期バンドサウンド(中略)でぶん投げたガジェット第2号です。
ロック、ジャズ等のベースサウンド担当ですが、人によってはメロディとかの音域も無理やり担当させる場合もあるらしいです。
EDMには流石に使ったことはないです。あいつらはサブベースには勝てない……。
ジャズ系でウッドベースに何度かお世話になった気がしますが、記憶を遡ってもあんまり使った記憶ないかも……。
電子曲方面でスラップベースを曲にノリを持たせるために入れることが何度かありましたが、なんだかうまく強調された音が出ず、M1のスラップベースの方が使いやすいじゃん!ということでぶん投げてます。
かなり低い音域に特殊な音源があるらしいです。なんかこう書くと攻略本に掲載されてる情報みたいだな!
Vancouver
総評: 音源に音階を与えるタイプのサンプラー。デフォルトで入ってる音も使いやすいし、オシレーターも小回りが利いて便利
サンプルを使ってメロディを鳴らすタイプのガジェットです。イメージとしては音MADに近いかな?
例えばリコーダーの音を録音してバンクーバーに貼り付けます。その音をCにピッチを合わせて、鍵盤を叩けばリコーダーを演奏している感じになる、みたいな感じです。
自分がこれを購入した理由は1番目のデモ音源が良すぎてびっくりしたからというよくわからない理由ですが、買って後悔はしてません。
手持ちの音源をインポートすることも可能ですが、自分はまだ試してないです。
プリセットはそれぞれ2種類の音源が一緒に入っていて、且つサブ波形を選べる感じです。オシレータそれぞれにトランスポーズもついているのでオクターブ下でサブベースっぽいのを鳴らして低音を補強!みたいなこともできます。ビブラート機能ついてるのやや偉い。
Lisbon
総評: 電子サウンドやるなら絶対に持っておくべき
ここに全てを置いてきた
youtu.be
以上
DeeMax
音源じゃないけど持ってるので一応紹介。
マキシマイザーです。最後にマスターに刺して音圧を上げるアイツです。
普通にマキシマイザーとして使う場合はデフォルトで搭載されているリミッターと使用感はほとんど変わらないと思います。見た目がちょっとかっこよくてアガるくらいのメリットしかないです。
DeeMaxが本領発揮するのはTURBOスイッチを入れている時です。レバーを0に入れて置いてもいきなり音圧上がるし、やたら音割れします。
マスタートラックのリミッターは本来音割れを起こさないように刺すものですが、こいつは逆で、音を割りにきます。
当然普通の楽曲だと全ての雰囲気もミックスバランスもぶっ壊してくるので、不適です。めっちゃリリースがブチブチ鳴ります。なので用途はEDMのさらにそのサブジャンル、ハード系などの生半可ではない攻撃力を持つトラックに限られます。
音をデカくすることでしか自我を肯定することができない悲しきハードサウンドクリエイターにはお勧めのマキシマイザーです。自分は今のところ1曲にしかターボ機能を使ったことがないです。
SAFEスイッチもあることにはあるけどこれを使うのは""軟弱""
これ書いた後に制作中のTranceにターボ突っ込んだらめちゃくちゃサチュで気持ちよくなれたので今後はもっとターボ機能を雑に使っていこうと思います
Salzburg
総評: そこそこ本格的なピアノ音源。ベロシティを丁寧にいじらないと無価値
いい感じのピアノ音源です。KORG Moduleを買うとついてきますが、これがフリー版のModuleで事足りるのか有料のModule Proである必要があるのか、Proを買った上でさらに追加購入する必要があるのかはちょっと憶えてないです。
ピアノはあらゆるジャンルで使える音源なので持っておいたほうがいいかなとは思いますが、電子系だとM1でも代用できたりするので必須ではないと思います。でもKORG Gadget一本で作曲していくならKORG Module買わない理由なくないか?と思うので結果的に買うことになると思います。
ベロシティごとに音の雰囲気が違うので丁寧にいじってあげましょう。モバイル端末オンリーだとベロシティが100の状態で常に鳴るので、できたらベロシティが有効なMIDIキーボードとセットで使ってあげると効率いいかなと思います。リアルタイム録音ではなく、単純に音をチェックするために。
プリセットは何種類かありますが、一番上のしか使ったことないです。どうしたらいいんだあいつら
Montreal
Alexandria
Firenze
エレクトリックマンにはどこに使うのかわからない……エレピだけはたまに使います。
これらもKORG Moduleを買うとついてくる音源です。
ガジェットの質自体は結構いいはずですので、単純に作風との相性の話ですね。後から簡単に歪ませられたら使ったかもしれないけど
Glasgow & Fairbanks
総評: 課金音源の追加先。おそらくここに一番金がかかるが、電子楽曲に溶け込ませる分には十分なスペック。狙ったジャンルに絞って購入できるのが強みか
いずれもKORG Module内で購入した追加音源が割り当てられるガジェットです。音源としてはシンプルな総合音源で、良くも悪くもパラメーターの数が抑えられています。
Glasgowがストリングスをはじめとしたオーケストラサウンドが、Fairbanksがその他音源を担当している感じです。
音源の質は非常に満足していますが、一つだけ悪い点があります。これらにはモジュレーションのパラメータもあるのですが、ガジェット上にモジュレーションをコントロールできるツマミがありません。ベルリンみたいにスライダーとかあれば便利なんですが……。一応MIDIキーボードからモジュレーションホイールでいじることは可能なので、キーボードがある場合は使うと楽になります。
ちなみに、Module音源はAUv3に対応しているのでガレバンなどでも使うことができます。将来的に別のモバイルDAWに乗り換える予定がある場合でも腐らないのでオススメです。
音源の詳細については非常に種類が多いため、分けてレビューしていきます。こちらも使ったことがあるものだけ。
ここで思い出したけど、KORG Moduleの音源は1週間試用ができます。デモサウンドを聴くだけだとどの音まで細かくいじることができるのかわからないことも多いため、百聞は一見に如かずということでまずは試してみるといいでしょう。触るとわかるけど意外と音源いじれないんですよね。
www.korg.com
↑Module音源の詳細ページ
Orchestral Dreams - KApro
総評: エピックサウンドスターターパック。裏側に配置するのが向いている音源が主。
オーケストラを構成する基本的なサウンドが入ってます。適当に空間埋める用途でのストリングスなら適当にコードを鳴らしておくだけでいい感じになってくれます。マルセイユやM1ではエピックサウンドはちょっと物足りない部分があるので、これを買って補うことになります。覚えてないけどオーケストラ系サウンドは全体的に価格が高めだった気がする。定期的にセールやっているのでそのあたりを狙いましょ
Monumental Choir Dreams - KApro
総評: もうちょっとクワイア音源を背伸びしたい人向け。高品質だがコスパは微妙かも
Choir音源がメインのサウンドパックです。クワイア―は上記のオケサウンドパックにも含まれてますが、こちらはかなりの種類のクワイアーが入ってます。正直全部の音源を把握するのがキツめです。そのぶん目当ての音源さえ当てはめたらかなりかっこいい楽曲に仕上げられます。低音が重い感じの雰囲気が出せてニコニコできます。
総評にコスパが悪いと書いてますが、これは使っている感覚としては必ずしもこっちのクワイア音源である必要はなくて、上記のオーケストラサウンドパックのクワイアやM1の音源でもそこまで不自由してないからです。エピックサウンドにあんまり手を出さない人はそういう意味では微妙かもしれません。
リードっぽく使ったり発声の母音をいじったりとかは流石にできません。
総評: 局所的にホラーな感じが出せる音源。使いどころは選ぶ
デモサウンドを聴いたとおりのおどろおどろしいサウンドが入ってます。ピッチを外しまくる音が多く、楽曲に強い印象を与えますが、買った割にはそんなに使ってないな!って感じです。ゴシック系とかの曲を作るなら相性いいと思います。ゴシックよくわからないけど
Iconic Suite "Solo Violin" - KApro
総評: 男の子ってこういうのが好きなんでしょう?音源を差し替えるだけで曲がかっこよくなるソロバイオリン
総評の通りです。あまりにも期待しすぎて追加直後に購入し、使いまくってます。リードに持ってきて力強いバイオリンを鳴らしまくれます。めっちゃたのしい。正直これスマホで出していい音なのか……とたまに思います。
イメージ的には自分としては激しい楽曲にキレのあるバイオリンを挿し込むのがメインですが、ゆったりした楽曲にやさしいバイオリンを添える、みたいなのも全然いけます。
この音源とは全然関係ないけどソロストリングスの打ち込み方ってインターネットに全然ないので毎回試行錯誤しながら表情付けしてます。いい感じのチュートリアルあったら教えてください。
mimoPop
総評: 最近人気のkawaiiサウンドを作るのにマッチしたサウンドパック。コルグ!
ほとんどが女声ボーカル(?)から作ったサウンドです。リードはもちろん、アルペジオやスネアタム等のドラム向けボイスサウンドもあります。デモサウンド通りにボイスオンリーで曲を作るのはだいぶハードルが高いですが、ピン差しでなら色々な方面で使えます。声ネタもあったりでいい感じにユニークです。
Kawaiiサウンド、最近はKawaii Future Bassとかで人気のあるジャンルですが、一か所のサンプルパックに需要が集中してワンショットが被りがちだったりするので、ここのマイナー音源を使うことで音被りを回避できる地味なメリットがあったりします。KORG Gadgetユーザー間ではもちろん音被りしまくりますが。
Iconic Suite "Supreme Cello" - KApro
総評: ソロバイオリンと同じく男の子がすきなカッケー音源
用途としてはソロバイオリンの項に書いた内容とほぼ同じです。高音も低音も力強いサウンドが出せて気持ちよくなれます。ついつい適正音域からはみ出るけどハーモニクスで鳴らしてることにしてごまかしていけ!(実際問題このあたりの細かい実機の仕組みをよく理解できてないので高音出すときの注意点とかあればおしえてください(楽器のことを実機呼びするな!))
Manipulated Voices
総評: 神秘的な雰囲気を作れるボイスサウンド。LFOっぽい効果を切れないのが悲しい
KORG Gadgetとしては珍しいタイプの音です。複雑怪奇な音を出せます。
これを買った時は本当はLFOを全部切って素の音をリードに持ってきて独唱音源みたいに使えないかな~と思ってたんですが、加工感は消せない仕様みたいで悲しくなりました。裏方で支える用途で使うのが主かなと思います。
Intense Bass
総評: ドラムンベース方面にありがちなエッグいベースサウンドを簡単に出せる極悪音源
かなり人を選ぶ音源ですが、刺さる人には非常に刺さると思います。デモサウンドを聴いてみてビビっと来た人はぜひ買うといいでしょう。音の属性的にはワブルベースであるMiamiと近そうですが、Miamiには出せない音です。どちらかというとMiamiの方が結構特殊な出音だと思うところはありますが。
ワブルベースといえばモジュレーション的にエフェクトをぐりぐりしてこそ活きるサウンドですが、ガジェット上ではそこまで細かくいじれません。良くも悪くもシンプルであるところには注意したほうがいいです。幸い購入前に試用できるので試してみましょう。
KORG Module関連については以上です。
総評: あのM1がスマホでも使える!嘘です、iPad版でのみ購入可能。マルセイユの進化先みたいな総合音源
言わずと知れたKORGの名作M1のガジェットです。iPhoneでは買えない(iPad側で買ってさえしまえばiPhoneでも使えるという噂がある)という制約がありますが、可能であればぜひオススメしたい音源です。オールジャンルな音源を揃えており、その上で特にbell/mallet系にはKORG独特の音が多く入っています。
デメリットとしてガジェットとして使うM1はパラメーターの数が限定されています。もしフルエディットでプリセットをいじりたい場合はスタンドアロンで起動してそちら側でエディットしてからプリセットを持ってくる必要があります。ただし、電子音じゃないものが大半なのでわざわざそこまでいじらなければいけない音源なんてないと思います。ちなみにツマミはありませんがモジュレーションもちゃんといじれます。
生楽器使いたいけど普段からそういう系統の音を使い慣れていないエレクトロユーザーにとっては雑に扱えるクオリティの音源なので非常におすすめです。
Lexington
総評: アナログシンセのガジェット化。時代古めの音が多いが電子音ユーザーならクリッパーで全てを解決する、その気になれば最近っぽい音が出せる
実機のエミュです。実機であるという制約がいくつかありますが、パラメーターがかなり多く、音作りのしがいのあるシンセサイザーです。
実機のデメリットとして、Lexingtonは最大同時発音数が16ですが、これはユニゾン等も含めた音数です。例えば素の単音でユニゾン設定が4であれば、4和音を鳴らすと16音分使ったカウントになります。8音重ねた場合はオクターブで鳴らすだけで上限の16に到達しますので、Pad等に使う時は若干気にする必要があります。あとなんでかわからないけどKORG Gadget上でベロシティをいじってもLexingtonに反映されません。
メリットはパラメータの豊富さですが、正直どこがどうなってるのかわかりにくく、実機側のマニュアルを読んでもイマイチで、使いこなすハードルは高いです。自分は現在勉強中。最近ようやくデフォルトの波形をいじれるフェーダーを見つけました(ソーとスクエアしかないんか…)
それでもプリセットメインで使うなら十分だと思います。エフェクター関連とモノ/ポリの切り替え方だけ把握していたらOKだと思います。ちなみにエフェクターはLisbonとほぼ同じです。
エフェクターにクリッパー(歪み)があるので、バチバチに歪ませるだけでだいたい電子楽曲に向いてる音に改造できます。個人的評価ではこのクリッパーがあったからこそLexingtonを使い続けてると言っても過言じゃないです。でもこのシンセを使いこなせるようになったら評価変わるかもね
Milpitas
総評: 問題作。シンセの構造は唯一無二だが、真正面から付き合うには相当な覚悟が必要
実機Wavestationのエミュです。様々な音源が入っていてプリセットを眺めるだけだとM1に近いです。M1買えない環境のユーザーはジェネリックM1としてこっちを買えばいいんじゃないかな(暴論)
このシンセの要は「ウェーブシーケンス」です。短いサウンドを並べてシーケンス上に鳴らすことができます。しかし、これを一からサウンドメイクするのはほぼ不可能といっていいです。膨大なサウンドの海を彷徨って漂流し、帰ってこれなくなります。
一応ランダマイズ機能があるので音源ガチャみたいなことはできますが、いばらの道であることには変わりません。
一方でウェーブシーケンス機能を使わずに総合音源として使うだけならMilpitasの強みを完全に握りつぶすことになります。買う前に試用もできませんし、これを買うなら相応の覚悟が必要だと思います。音源の内容自体はやさしい音が多くて好きです。
ウェーブシーケンスをギリギリ活用する方法としては、ドラム系の音源だけでウェーブシーケンスを作ってループ音源っぽく扱うくらいが現実的な範囲でできることかなと思います。これを使いこなしている猛者いたら名乗り出てくれ!
Warszawa
総評: 最近のベースミュージックを作るのに必須なウェーブテーブルシンセ。VitalやSerumにはなれない
ベースミュージックでよく聴く謎の効果がかかっているシンセサウンドを出せます。他のガジェットとは全く別の仕組みのオシレーターを搭載していて、実際にいじると簡単に理解できるのですが、元の波形自体を変化させていくことで強烈なサウンドを鳴らすことができます。
これはPC環境でいうSerumやVital等と同じシステムなのでそれらの真似事をしようとWarszawaを買ったのですが、あれらのサウンドに憧れを持って使うと機能のギャップにむせび泣きます。
具体的にはエフェクトが貧弱です。とはいえ2万円以上する高級シンセサイザーと比較するのもどうかという話ですが、KORG Gadget自体がエフェクトのバリエーションが貧弱なのも合わさって思ったより刺激のあるサウンドを作り出すことができません。ワブルベースを作る時も相当な数のエフェクトを重ね掛けして作っていきたいのにそもそもWarszawaに刺せるエフェクトの数が限られているのが相当痛いと思います。
繰り返しますがこれはあくまで高級シンセサイザーとの比較でこうなってしまっているだけなので、他ガジェット音源との比較になれば普通に優秀です。ウェーブテーブルをいじるだけでギャリギャリした音は出せますしクロスモジュレーションもあるのでMiamiみたいなベースを作ることもできます。
ベース以外のサウンドだとピアノ等の生音が入ってますが、Warszawa上で生音源を選択するメリットとしてはLFOをかけられることです。Choirに疑似サイドチェインみたいなことをやれたりします。KORG Gadgetが3になってからPumperがIFXに実装されてわざわざWarszawa使う必要なくなったか?と少し思いましたが、PumperがBPM速かったり高負荷の状態で使うとダッキングのタイミングがずれるという悲惨な出来事に遭遇したのでまだまだWarszawaは使っていきそうです。(最新世代のiPad proでダメならどうしようもないんよ)
余談ですが、Warszawaをスタンドアロンで起動するとシンセサイザーというよりはDAWみたいなのが出てきます。操作方法さっぱりわからんですが結構楽しいので一度スタンドアロンでも遊んでみるのがおすすめです。
まだ購入してから日にちが浅いしそこまで使えてないので総評はないです。
これはギター音源ですね。ギターは詳しくないのですがリフがメインのガジェットです。プリセットは音というかリズムが収録されているので、適当に選ぶだけでジャカジャカやることができます。
電子楽曲でもギターリフは相性が良く、ベースと一緒にジャカジャカやったりして気持ちよくなれます。アンプ類のパラメータもいじれるので他総合音源ガジェットよりは格段良い音を出せます。
一度リードサウンドとしてSanta Anaを使ってみたんですが思ったより主張のある音を作れなくて難しいのか不適切なのかわからないなと感じました。おそらくアンプの設定に問題があって、エレクトロばっかりやってる自分にとってアンプは無縁の存在なのでそこの知識がごっそり抜けてるのが原因かなとは少し思ってたり。
ちなみにリフのコードをバラしてコードトーンの高さをいじることはできません。ここは明確なデメリットか。自由演奏できるプリセットから再構築できるのかな?
Sydney
総評: Bilbaoに欠けていた要素を概ね補完できるようなサンプラー、全俺は満足したし、これの登場で胸を張って初心者にKORG Gadgetを勧められるようになったとか
サンプラーです。Bilbaoとは若干目的が違います。
Sydneyは尺が長めのサンプル音源を扱いやすいガジェットです。尺が1秒くらいのドラムサウンド等は変わらずBilbaoが適しています。
Sydneyの長所は長めのサンプルを扱えることと、サンプルのタイムストレッチ機能、それからLofiエフェクトです。順に説明していきます。
Sydneyはだいたい30秒くらいの長さまで扱うことができます。ガジェットにtime remaining 60 secとか書いてますが、1分は流石にないと思います。長いサンプルといえば例としてSweepやライザーサウンドです。いずれもEDMでは基本的に突っ込んでいる音なので、電子音楽には需要があります。
尺の長い音はZurichでも代用できますが、鳴りだし位置の調整に融通が利かないのと、Zurich等のガジェットに音源を入れるとその都度プロジェクト内にWavファイルが生成されて邪魔になるのでSydneyに担当させるほうがスムーズになります。これはSydneyの長所じゃなくてKORG Gadgetの仕様の短所では
次にタイムストレッチ機能です。例えばループ音源って全部BPMが決まっていて、当然曲のBPMとズレていると楽曲が破綻するわけですが、そのテンポをプロジェクトに同期させていい感じにしてくれる機能です。テンポを変化させても音程は変化せず、よほど引き延ばしたりしない限りはそこまで音源は劣化しません。このおかげでループ音源はもちろん、ダッキングが入っているライザーサウンド等も手軽に扱えるようになります。
最後にLofiエフェクトです。これは通常のFXとは別に追加で足せる汚れエフェクトです。ジャンルは限られるかと思いきや、バリバリのドラムンベースなどでもフィル代わりのドラム音源にガッツリLofiをかけて強調するみたいな使い方もできます。それから単純にLofi自体の種類もいくつか選べるのでチルやヒップホップ等のジャンルユーザーにも嬉しい機能だと思います。
長々とおすすめポイントを羅列しましたが、欠点もあります。Sydneyはベロシティを変えても音に影響が発生しません。音量を変える場合はボリュームかレベルを変更しましょう。また、再生周りによくわからないバグもあって、上にも書いた60秒まで対応とか言いながら実際にはもっと短かったり、音源によっては2倍速(+1オクターブ高い)状態で再生されたり(ビットレートの問題?)、相変わらずLocalファイルにアクセスするときに一定の確率でKORG Gadgetがクラッシュしたり、クラッシュから再起動したらサンプルが別の音になってたり、なんかよくわからない挙動がいっぱいあります。まあリリースしてまだアップデートきてないので今後修正されるでしょうということで静観します。
長々と書きましたが、こちらもBilbaoと同じく必須ガジェットだと思いますので、なるべく早く手に入れましょう。
終わりに
というわけで各ガジェットの所感を書きました。念押しで繰り返しておきますが、あくまでエレクトロミュージックをメインに作っている自分目線の評価です。アコースティックユーザーや80年代アーティストだと評価は正反対になると思いますし、たぶんLisbonは意味不明とか言われます。ただしこういう音源の評価って他所からの文句を恐れてありきたりなことだけを書くと超絶役に立たない虚無情報を電子の海に垂れ流すだけで終わってしまうので、本音に近い形で書くべきなんですよね。
つまり何が言いたいかというとみんなももっと本音でガジェットについて書いてくれ!ということです。純粋に自分が参考にしたいです。
Stockholm、Montpellier、Menphis、Pompei、Otorii、Ebinaやその他Module追加音源は持ってません。ぱっと見た感じ別に要らないかなと思ってスルーしてますが、「オマエこういう曲作ってるなら絶対相性いいって!」みたいな熱烈な宣伝があれば教えてください。俺もやったからさ
今回は課金ガジェットのみに触れましたが、デフォルトで使えるガジェットについては過去に動画に出してますので、もし気になれば見てください。
youtu.be
音色紹介の追加ガジェット版の動画も作ろうと思ってメモがてらブログにまとめたけど、これわざわざ動画にする必要あるんかなあ、動画に新規に足せる情報といえば使用例のサウンドくらいしかないが……。